楽しくない

published: 2021-08-22

last modified: 2021-08-23

フジロックに本当は東京にいる友達と5人で行こうと思っていたんだけど、1週間前ぐらいになって、やっぱどう考えても無理だね、となってやめた。福岡からほとんど行き来してない自分が移動するのもどうかな〜、というのもあったり、いろんな理由もあるのだけど、泊まる予定だった群馬の旅館をキャンセルする電話をかけたりするのはやっぱりつらかったし、車を久しぶりに運転するかもしれないということで受けたペーパードライバー講習も無駄になってしまった。旅館は1週間前にもかかわらずキャンセル料なしだったし、そのうちフジロックがなくても泊まりに行きたいと思った。まぁそんなこと言ってる間に潰れてしまうのかもしれなくてそれも怖い。

一週間前ぐらいからSNS上では開催に反対する人の声とか、音楽業界を成り立たせるための努力に関する意見が自分が思ったよりもたくさん出ていて、そして当日になるとライブ配信を見ている人のツイートが思っていたよりいて、意外とみんな見るんだな〜と思った。

一方自分はというと、無料で配信されているよというのを知っても全然みる気にならず、NetflixでWW2のドキュメンタリーとかを見ていたり、一日中布団で気絶していたりした。 開催すべき、すべきでないという議論を見るだけで、なんでミュージシャンがこんなに自分が仕事をすることが地域住民を危険に犯すかもしれないというリスクを天秤にかけることになるのを意識しながら頑張らなきゃいけないんだろうと思うと、もうそれは音楽を楽しむお祭りとしてみることはできなくて、ポーズとして参加することしかできないし、素直に音楽を楽しめる状態ではないなと思っていた。

元々、車で移動する予定だったし、人数も半分に減らす、ということであれば、まぁ自分が行くことで音楽業界を手助けできるのなら、という気持ちもあったので行くことにした(5月くらいだ)のだけど、実際写真見たら前列めちゃくちゃ集まってんじゃんというのもじわじわ嫌な気持ちになってしまった。

そもそも自分が助けたいと思った音楽業界とは一体どこのことなんだろうか。自分は標準的な音楽業界からはこぼれ落ちている身だし、ライブという形式が社会の中で機能しなくなってしまっているのならそうではないやり方を探すしかないと考えているところだし、これまでやってきたやり方に固執するしかない、いわゆる音楽とメインで呼ばれているものに対してますます興味がなくなってきてしまっている。

音楽に政治を持ち込むなと言われていた頃は遥か遠く、音楽に政治以外を持ち込めなくなってしまった。どんな音楽がどうだったじゃなく、誰がいつどこで何を言ったりしたりしたか以外見られない。でもそれは実は表裏一体で、音楽に政治を持ち込むなという声はある政治的態度に腰を預けっぱなしにしてるからであって、誰が何を言ったかを注視し続けて意見を交わし続けるのは結局のところ、腰を預ける位置が人によって変わったというだけで、預けた腰を動かして自分で何かしようという可搬性のなさに関しては結局何も変わっていないのだと思う。

4月末にライブ演奏をやったばかりとはいえ、自分はもう音楽をやることにほとんど愛想を尽かし始めているようにさえ思う。こうやって音楽についての文章をクドクドと書いているときの方がまだ気分がマシな気もする。みんながみんな、今日を生き延びるのに必死で10年先、100年先の音楽の姿を創造する余裕がないことが、多分息苦しい。それは音楽は今・ここで表現されるものだからという言説が強化されすぎた結果にも思う。

「偽ミュージッキング」という話も友達としていた。録音芸術が配信、ストリーミングによって物理的な形を失い、その一方で音源を売ることでは稼げなくなってきた音楽業界がライブに躍起になってきたこの数年、コミュニケーションとしての音楽の側面ばかりが取り沙汰され、時間を横断して積み重ねられる音楽作品の歴史性みたいなことを誰も考えなくなってしまったのかもしれない。

いや、まぁ社会がそうなったということは誰しも音楽にコミュニケーションとしての側面しかそもそも求めていなかったのだろうか。みんな結局スターシステムが大好きだし、はじめから作品はファンダムの付属物でしかなかったのかもしれない。現代美術も、漫画もアニメも音楽も。

だとすれば、これから10年自分が何を目指して頑張ればいいのかはもはやよくわからない。頑張るべきことは教育なのかもしれないなとも思ったりするけれど、自分が生きている間に目に見える変化を起こせる気がとてもしない。だったらパンでも焼いておいしいもん毎日食べてテキト〜に仕事してのらりくらりと暮らして〜。でも、その生活の苦しさが今の苦しさよりもきついことはもうわかってるから、こういうところに書き捨てて、明日からは別のことを考える。

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