Matsuura Tomoya

Mon, Oct 9, 2017

はならぁと ぷらす2017にて新作「Aphysical Unmodeling Instrument」を展示

(10/27追記:文章を追加しました。)

2017/10/27~11/5に行われる、奈良の町家を使った芸術祭「はならぁと ぷらす」で新作のサウンドインスタレーションである「Ahysical Unmodeling Instrument」と言う作品を展示します。

また10/28には展示会場でのライブ「don’t play」を開催します。

http://hanarart.jp/2017/archives/2185

(Arch | L)ive #1 Aphysical Unmodeling Instrument

ステートメント

シンセサイザーにおいて、実際の楽器を計算で模倣する、物理モデリング合成と言われる手法がある。その初期に作られた”Whirlwind” という名前の模倣する目標の無い抽象的な管楽器計算モデルがあった。

本展示ではWhirlwindをマイクやスピーカーなどの物理的要素の組み合わせで再構成し、その場の環境に合わせて変形させ続け、更にもう一度計算モデルへコード化する事を繰り返す。通信、記録、演奏、作曲を楽器とモデル化いう観点から捉え直す。

開催日時

2017/10/27 ~ 115 10:00~16:00

会場

〒634-0005 奈良県橿原市北八木町2丁目1−1

八木札の辻交流館2階

入場無料

アクセス

近鉄線「大和八木」駅南口より徒歩7分

JR畝傍駅から徒歩5分

https://www.city.kashihara.nara.jp/bunkazai/yagifudanotuzikouruukann.html

大和八木駅へは大阪のなんば駅から電車で40分ほど、また関西空港から1時間ほどの直通バスが出ています。

ライブ 「don’t play」

「Aphysical Unmodeling Instrument」の展示装置を用いて行われるライブパフォーマンス。

日時

1028(sat) 16:30~

予約不要、入場無料


文章

コンピューター上で現実の楽器の音を模倣する、物理モデリング合成という手法の研究の中で生まれた、Whirlwindというハイブリッド管楽器モデルがある。これは元々トランペット、フルート、クラリネットの3種類のモデルがあり、それを和集合的に合体させたモデルである。 3種類の楽器の音をうまくモーフィングできるように専用のコントローラと一緒に開発されたのだが、その後このモデルが発展していったような記録は無い。

モデリングとは、現実にあるモデリング対象を観察して、自分の中でその構造や振る舞いを想像し、その特徴をよく表すような数式だったり、特性(例えば縮尺とか)が違う物体に実装していく行為だ。

実装してみて、自分の頭の中のモデルと比較して、また実装して近づけていく。 本来「モデル」と言うときは最終的に実装されたものを指す場合が多いが、敢えてここでは頭のなかで想像されたものを「モデル」と言い、実装されたものを「モデルの実体」と呼ぶことにしよう。

model_of_model


さてモデルの実体が数式だった場合はいいが、それが建築の縮尺された模型のようなモノを伴う場合、更にそれの記述、というものが存在する。“この模型の縮尺は1/100で、素材は紙であり・・・”といったようなテキストから、その建築模型の展開図や設計図のようなものがあるだろう。これを「モデルの記述」と定義する。 ここで数式で表されるようなモデルでは、「モデルの記述」が数式そのものであり、例えばそれが書かれた紙やデータの保存されているメモリのような物質を「モデルの実体」と呼ぶことにしたい。

数式モデルはモデルの記述が紙などに実体化され、建築模型では模型としての実体があり、それを記述する言語がある。いや、ではその記述を書いた紙があって、、、といくらでも考えられるのだが、まずはこの話を音楽において考えてみたい。


例えば楽器のモデルについてはどうだろうか。コンピューター上で現実の楽器のような振る舞いをしてほしいので、頭のなかで現実の楽器で起きている現象を分析し、数式に落とし込み、実際に鳴らしてみて、頭のなかでのモデルと比較する。しかしトランペットだったら現実にトランペットがあるのでその音を録音して数値的に比較してしまうこともできる。

ここで作曲・楽譜・演奏について同じような話を適用するとどうだろう。

作曲家の頭の中にある理想の音楽があって、それをよく振る舞うように楽譜というフォーマットで記述している。 指揮者や演奏家がその楽譜を読み、演奏してみて、自分の頭のなかで想像していたものとの差を埋めていく。 しかし当然作曲家の頭にあるモデルと演奏家のモデルが異なっているので、元のモデルを完全に再現したものが演奏されるわけではない。つまり「モデルの記述からモデルを想像する」「モデルをモデリングする」ような事が起きていると言える。

実は楽器においても似たような話を考えることは出来る。 あるファズ(歪み効果の一種)エフェクターはギタリストがギターでサックスの音を出したいという要望に答えて作ったという話がある。じゃあ、仮にギターの音がどんどんサックスに近づいていったとき、それは「歪んで」いるのだろうか?むしろだんだんクリアなサックスの音に近づいていくという言い方のほうが正しいような気もする。これまた現代ではこのビンテージファズエフェクターの再現モデルがたくさん出ているが、別にギターをサックスの音に近づけるエフェクターというものは出てきていない。

こういうモデリングの途中で元々の目的を忘れてふらふらと寄り道をしながら楽器や音楽が進化、いや時には退化かもしれないが変わっていく。

model_of_model


さてはじめのWhirlwindの話に戻ると、この研究が発展しなかったのは当然といえば当然で、トランペット、フルート、クラリネットのモデリングをより本物の楽器に近づけるほどにその性質は分化していき和集合を作ることが難しくなってくる。Whirlwindの辿り着くべき目標=モデリング対象が存在しないのだ。

この作品ではWhirlwindの目標としている、あるいはモデル記述する際に頭のなかに浮かんでいた(はずの)モデルを勝手に想像して補完し、モデルの実体を作り上げてみたい。それはあるモデル記述からもとのモデルを想像する演奏にも似るかもしれないし、自分の頭のなかにある理想を実体化する作曲とも似るかもしれない。

(文章終わり)


1021~29の宇陀松山エリアで行われる「はならぁと こあ」では電子音楽系の展示やコンサートが開催されているので27,28,29が個人的にはおすすめです。

前回の作品とは違い少し音楽的な内容の展示になる予定ですので、前回より気楽にお楽しみいただける感じにはなると思います。よろしくお願いします。