Abstract
音響装置作品《送れ|遅れ / post|past》は音響遅延線メモリーという電子計算機の黎明期に使われていた記憶装置を題材にしたサウンドインスタレーションである。すでに淘汰され使われなくなったメディア装置、その中でも特に記憶装置を取り上げ、現代の技術を取り込み異なるシステムとして提示することを行った。本稿では音響遅延線メモリーの基本的な仕組みと歴史を述べた後、作品のシステム解説と制作過程を記す。その後、作品の考察としてメディア考古学という研究アプローチを手がかりに、メディアアートという作品カテゴリの考察法そのものを検討し、本作品の考察を行う。加えて、音響遅延線メモリーやGoogle Docsなど作品に使われている技術という観点から関連作品との比較考察を行い、まとめる。